南側に開けた角地に建てる ― パッシブデザインと天空率を活かした高性能注文住宅

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住宅の設計において、設計士に求められる役割は単に「お客様の要望を間取りに落とし込む」ことだけではありません。決められた敷地の中で、暮らし方や間取りへのご要望をいかに実現するか。パッシブデザインの視点から、冬期には南面からの日射をできるだけ多く取り込み、夏期には日射遮蔽によって室内の温度上昇を抑えること。そして、敷地に無駄なスペースを生まず、限りある広さを最大限に活用すること。これらを同時に成立させることこそが、設計士の腕の見せどころだと私たちは考えています。

今回ご紹介するのは、滋賀県野洲市で2025年9月に完成したお宅です。敷地の条件と施主様のご要望を丁寧に整理しながら、注文住宅だからこそ実現できた設計の工夫についてお伝えします。

敷地の条件と施主様のご要望

この敷地は、南西と南東の二方向に接道した角地です。南西側には公園があり、そこからの視線や騒音への配慮が必要でした。また、敷地が異なる用途地域にまたがっているという特徴もあります。北西側は建ぺい率60%・容積率100%の第一種低層住居専用地域、南西側は建ぺい率60%・容積率200%の第一種住居地域です。用途地域が異なることで、適用される建築規制も変わってくるため、慎重な検討が必要でした。

施主様からのご要望は、明確かつ具体的なものでした。一年を通じて快適な高断熱・高気密の住まいを望まれており、全館空調の導入も希望されていました。また、過去にバウムバウムの完成見学会や、草津市のパッシブデザイン住宅の見学を経て、使いやすい家事動線のある間取りへの強いこだわりをお持ちでした。さらに、約4.5帖のゆったりとしたファミリークロゼットをはじめ、十分な収納スペースを確保したいというご要望もありました。

初回プランの考え方

これらの条件とご要望をもとに作成した初回プランでのポイントをご紹介します。

まず、南西方向にある公園からの視線や騒音を遮るために、建物を敷地の北東方向に寄せる配置としました。これにより、南西側にはカーポートとポーチ、庭を設けるゆとりが生まれました。

収納計画については、約4.5帖の広々としたファミリークロゼットに加え、玄関からアクセスできる土間収納も設置。洗面室と洗濯脱衣室もゆとりのある広さを確保し、毎日の家事動線がスムーズになるよう計画しました。

パッシブデザインの観点からは、南面からの日射取得を最大化するために、建物に対して斜め45度の角度で窓を設置するという工夫を採用しました。2階の窓から取り込んだ日射が吹き抜けを通してLDKに届くよう計画することで、冬期の暖かさを自然の力で引き出せるようにしています。屋根については、北側斜線制限を考慮して寄棟屋根を採用しました。

屋根形状の変更と「天空率」の活用

初回プランから大きな変更はなく最終プランへと進みましたが、ひとつの課題が生じました。施主様から「軒の出た寄棟ではなく、スクエアな印象の外観にしたい」とのご要望があったのです。

太陽光発電パネルの搭載も予定していたことから、屋根を南西側に傾斜した一寸勾配の片流れ屋根に変更することにしました。しかしこの変更により、北東側の軒高が高くなり、北側斜線制限によって建物を南西側に寄せなければならない状況が生じました。そうなると、隣地との間に活用しきれない無駄なスペースが生まれてしまいます。

そこで活用したのが「天空率」という考え方です。

天空率とは

天空率とは、ある地点から空を見上げたときに、建物などの遮蔽物に覆われずに見える空の割合のことです。2003年の建築基準法改正により導入された制度で、北側斜線制限などの高さ制限に代わる代替手法として認められています。

従来の斜線制限は、定められた斜線の内側に建物を収めることが絶対的なルールでした。一方、天空率を用いる手法では、「計画建物の天空率が、斜線制限に適合した仮想建物の天空率以上であること」を証明できれば、斜線制限を超えた建物形状も認められます。天空率のメリットは、斜線制限だけでは実現が難しかった建物形状や配置を可能にし、敷地をより有効に活用できる点にあります。特に今回のように、片流れ屋根や特殊な建物形状を採用したい場合に有効です。空間の有効活用が広がることで、お客様の要望により近い住まいを実現しやすくなります。

一方でデメリットもあります。天空率の計算は専門的な知識と手間が必要で、建築確認申請の書類も複雑になります。また、近隣への説明責任も生じるため、対応に時間がかかる場合があります。

今回は、天空率を用いて建物形状と配置を再検討することで、敷地を効率よく使いながら施主様のご要望も叶えることができました。

注文住宅だからこそできること

規格住宅では、建物形状や仕様がほぼ決まっているため、「敷地にどう建物を置くか」という検討に限られます。しかし注文住宅では、法的な制限や日射取得のシミュレーションを重ねながら、建物の形状や配置を微調整することができます。今回の事例のように、南からの日射取得のために建物に対して斜めに開口部を設けたり、天空率を活用して敷地を最大限に生かす工夫も、注文住宅ならではのアプローチです。

十分なヒアリングと、これまで私たちが手がけてきた建築事例をご覧いただきながら、お客様のご要望を丁寧に整理して設計に反映する。同時に、パッシブデザインの視点からエネルギー効率の良い建物を追求し、暮らしの利便性や将来の拡張性にも目を向けたご提案をする。それが私たちの考える高性能な注文住宅のあり方です。

打ち合わせに要する時間など、規格住宅に比べて手間のかかる住まいづくりではあります。しかしその分だけ、理想とする住まいにより近づくことができる。そのような住まいづくりを、ぜひ私たちと一緒に進めてみませんか。

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