野洲市でシンプルでミニマルな注文住宅を建てる〈建築費編〉

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必ず通らなければならない「お金」の問題

前回のコラムでは、住まいづくりには、2つの入り口があるとご紹介しました。ひとつは、性能や仕様、デザインなど、ハードウェアとしての「家」を検討していくという入り口。もうひとつは、暮らし方というソフトウェアの視点から「家」のあり方を考えるという入り口。どちらの入り口が正しいということはありません。ただし、いずれにおいても柱となるコンセプト、あるいは価値基準は、最初から最後まで一貫してブレさせないことが、納得のいく住まいづくりの秘訣だと心得てください。

また、いずれの入り口から入ったとしても、必ず通らなければならないのが、お金(建築費)の問題です。私たち工務店が、住まいづくりにおいて大切であり最も難しいと感じることのひとつが、お客様のご要望をできるだけ反映しながら、費用をご予算内に収めていくということです。

M様邸において建築費をご予算内に収めるためにした工夫のいくつかを以下にご紹介します。

ガレージの屋根は既製品とのハイブリッドで

雨が降っても自動車の乗り降りが便利な屋根付きのガレージは、毎日の生活でとても助かります。しかし、屋根全体を建物の一部としてつくると、相応の建築費用がかかるのも事実です。一方、既製品のカーポートをガレージに設置すれば、建築費を抑えることができる反面、カーポートは住宅本体と一体に見せることは難しく、また、設置する場所によっては建物の前に立ちはだかるような存在になることもあります。

そのようなメリットとデメリットを勘案して、ガレージの屋根は既製品とのハイブリッドとすることにしました。具体的には、建物正面には玄関ポーチを覆う下家(げや)を設け、下家の奥には既製品のカーポートを設置します。建物正面からはカーポートの存在が家で隠されるため、全体の見た目がスタイリッシュになり、また建築費を抑えることもできます。

なお、下家部分はご主人が通勤で使用するバイク置き場も兼ねています。

【現在建築中。完成後に写真を掲載します】

下家は木張りから塗り壁に変更

玄関ポーチを覆う下家は、当初木張りで仕上げる予定でしたが、資材価格や施工費の観点から塗り壁に仕様変更をしました。住宅本体も、付加断熱材の上から塗り壁仕上げですから、意匠的なバランスでの問題はないと判断しました。

窓ガラスの仕様はエネパスを計算しながら

建築費の面で大きなネックになったのがサッシの価格です。昨今の建築資材の価格高騰の影響で、トリプルガラスのサッシの価格が跳ね上がって、建築費に大きく影響しました。そこで、一部の窓ガラスをトリプル(3枚)ガラスから全てペア(2枚)ガラスにダウングレードした場合の、エネパス(建築物の燃費性能)を再度シミュレーション。今後数十年間の光熱費とサッシの購入価格との比較によりコストメリットを確認し、費用対効果の検討を経た上で全てペアガラスへ仕様変更を行いました。

〈表〉エネパスのシミュレーション結果

上の表は、一部の窓ガラスをトリプル(3枚)、下はすべての窓ガラスをペア(2枚)ガラスにした場合の計算の結果です。建築物の燃費性能に大きな差がないことがわかったため、すべての窓ガラスをペアにすることにしました。

空調室は小屋裏を作らずに

当社の場合、全館空調の機械室は小屋裏と呼ばれる小部屋を天井裏の一角に設けるのが一般的です。しかし、2階建ての場合は、さらにその上に小屋裏を作るため、建物全体の高さが高くなってしまいます。今回のM様邸の場合は、周囲の建物がそれほど高くないため、景観的に建物の高さを低く抑えるのが好ましいと判断しました。

そのため、空調室は小屋裏を設けず、2階フロアの一角に設けることにしました。これにより、建物の高さを抑えられるとともに、小屋裏を設けないぶん、建築費の削減にも繋がりました。

私たちはロングスパンの住まいづくりが得意です

以上2回にわたり、滋賀県野洲市で建築中(2024年9月現在)のシンプルでミニマルなM様邸の住まいづくりストーリーをご紹介させていただきました。当社としては、お客様の住まいづくりに対する強い思いに応えながら、建築費もご予算内に収めることができた事例のひとつだと自負しています。9月末には完成予定ですので、完成次第、文章内容に対応した各部の写真を追加する予定です。

「どのような暮らしをしたいか?」からスタートし、具体的なご希望を取り込んでいく。その上で、より暮らしが豊かになるアイデアを加えたり、最終的にコストについても仕様を再検討するなどして調整するのが私たちの住まいづくりのひとつのスタイルといえます。

間取りや仕様、設備などをテキパキとシステマティックに決めていくハウスメーカーの家づくりと比較すると、時間も手間もかかる住まいづくりのすすめ方ですが、そのぶん、アーキトラストが理想と考える、顧客満足度を最大限に高める住まいづくりであると思っています。

私たちはロングスパンの住まいづくりが得意です。「家づくりのパートナーとじっくり相談を重ねながら住まいづくりをしたい」そうお考えの方は、ぜひアーキトラストにお声がけください。

▼▼▼これまでの施工事例の外観やパッシブデザインのノウハウについては、インスタグラム・Youtubeでも配信中です。是非チェックしてみてください!

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