断熱性能(Ua値)より大切な事 その2

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(22.4.1の記事を再編して掲載しています)

新しい年度を迎え、日中はだいぶ温かい日も多くなってきました。
「住まいの心地よい温熱環境を整える」には一番厳しい冬期が、ようやく終わろうとしています。

先月オープンハウスを行った「長浜市高月町T邸」は、Ua値=0.36という、HEAT G2(Ua値=0.34)に僅か及ばすという断熱性能の、いわゆる「高断熱住宅」です。
私たちは断熱性能を「数値のみ」で追い求めることはしないと前回の記事でお話しましたが、仮にこの住宅で、断熱性能を「HEAT20 G2基準クリア」まで向上させた場合、もたらされるものは何になるかを今回検証してみたいと思います!

断熱性能を向上させる方法として、「窓の断熱強化」が定石としてあげられます。
今回T邸では、実際には南面の窓はペアガラスで設計していますが、仮に南面の窓全てをトリプルガラスへ変更すると、Ua値は計算上ちょうど0.34となり、「HEAT20 G2基準クリア」した住宅と言えます。

この窓の断熱強化の違いにより、それぞれエネパス(※1)のシミュレーションで年間の住宅冷暖房消費エネルギーの差を比較すると、以下の様になります。


(室内設定温度は冷房27℃、暖房20℃にて計算)
(※1)エネパス → 日本エネルギーパス協会による「家の燃費」を表示する証明書

トリプルサッシに変更してG2基準をクリアする断熱強化をすることで、住宅全体での冷暖房消費エネルギーはわずかに減少しています。

さらにそれぞれ光熱費に置き換えた場合は以下の様になります。

冷暖房の予想燃費が、年間で約500円のアップという結果となりました。
この差はほぼ同等のエネルギー性能と言って良い範囲だと思いますが、トリプルサッシに変更するために掛かる金額は、(T邸の場合は)概ね15~20万円です、、、
この金額差を大きく捉えるか・小さく捉えるかは人それぞれかと思います。

もちろん窓の性能自体が上がる事のメリットはあります。
冬期の曇り・雨の日などの陽射しが少ない日や夜間に、窓際のコールドドラフトが軽減されることは体感レベルでの快適さに寄与してくれますし、多少なりとも肌寒さを感じる機会を少なくしてくれるでしょう。

しかしながら、日常生活の中での様々な工夫により、同じくらいの効果を得られる方法もたくさんあります。
季節や時間によってカーテンを開閉したり、着衣量での調整、場合によっては必要に応じて省電力スポット空調を利用することも、実際の暮らしを数値以上に快適にしてくれます。
断熱性能を高める意味、本来の目的を正しく理解頂いている方であれば、こういった日常生活の工夫はむしろ当たり前の様にされている事かもしれません。

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